それに、日本人には「心」がありますね。当時、慶應の研究室は小さくて狭かったけれど、皆夜の十時以前に帰ったことがありませんでした。熱心に、勤勉に、心を込めて、非常にいい研究をしていました。日本人の規律正しさ、真面目さ、誠実さ・・・・・・。私達は“日本精神”が当たり前の時代を過ごして来ましたから、日本のよさは良く分かります。
たとえば、今の小学校2年生は何ができるだろうか、と考えるんですね。私達は2年生の頃から、農園に行って芋を作ったりしていました。4年生の時にはもう戦争が始まって、もっこをかついで高射砲のための土を盛ったものです。そういうことができました。物質的には欠乏していた時代でしたが、精神的な面できちんとした教育を受けていました。
戦後、日本が台湾から引き揚げた後、1947年には二二八事件が起こり、台湾人にとってはとても厳しく、物の言えない時代に突入してしまいました。二二八事件では多くの無辜の台湾人が殺され、私の友人もその犠牲となりました。あの頃は本当に辛い時代でした。日本が引き揚げた後の台湾が置かれた状況と台湾人の気持ちを、どれだけの日本人がわかっているかな・・・と思うことが時々あります。台湾の若い人たちには、自分たちの歴史をしっかり学んでほしいと願っています。
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