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台湾五十鈴汽車工業()有限公司/副菫事長(~2008年3月) 川浪 正人 氏 
昭和58年 法学部


な~るほど・ザ・台湾 2007年7月号より

新排ガス規制に対応しイージードライブ実現

いすゞのバス、トラックといった商業車の組み立て、輸入、販売を手掛けているのが「台湾五十鈴汽車工業股份有限公司」。いすゞブランドの台湾での総統代理としての役割を果たしている。今年から攻めの戦略に転じて、さらに業績を伸ばす動きを加速中だ。

 4月3日、桃園県のゴルフ場で台湾五十鈴汽車工業股份有限公司の新車発表会が販売関係者やメディア関係者ら150人を招いて開かれた。今年から台湾で強化された排ガス規制に対応したトラック、バスを紹介するとともに、いすゞ本社の役員がいすゞの開発コンセプトである安全、経済性、環境を強調した、同有限公司が業界で攻めに転じたことを内外に知らしめたイベントだった。

 台湾におけるいすゞブランドの歴史は、50数年以上と長い。これまで地元企業がディストリビューターとしていすゞの商業車を販売してきた。1995年には日本側独資による台湾五十鈴汽車工業股份有限公司が設立された。当初は台中工場でSUV(スポーツ多目的車)の生産を始め、現在では商業車1本に絞り、事業体制も同有限公司に一本化した。

昨年8月から太子汽車と合併

 昨年8月にはパートナー企業とした太子汽車から50%の出資を受け、台湾企業との協力関係を強固にした体制となる。今回のイベントは、新体制後の同有限公司の新たな戦略をアピールする場ともなった。いすゞ本社から出向している川浪正人副菫事長は「太子汽車の力を借りて、販売部門の強化とサービス体制を確立したい」と話している。

 同有限公司は日本から主要部品を輸入して、商業車を組み立てて販売している、いわゆるノックダウン方式である。運転台であるキャブ、シャーシ、エンジン、トランスミッションなどの大型パーツを台中工場で組み立てている。運転台や走行できる骨組みといった基本的な商業車の形までを担当しているのが同有限公司。そこに載せる様々な形の荷台や、乗客用のバス車両を製作するのは専門企業の業務となる。用途が多岐にわたる商業車ならではの生産形態である。

 生産販売しているのは、「エルフ」を中心とした3.5トン級の小型トラック、中型トラック、バスや10トン以上の大型車。小型トラックは日系メーカーが強く、いすゞブランドは27%のシェアを占めているが、大型車の分野では10%程度となっている。2006年は36万台の全自動車新規登録台数中3・5トン級以上の商業車は2万2000台強だった。そのうち3・5トン級の小型トラックが商業車の6,7割を占めている。このクラスは普通免許で運転できるため、需要が多いとみられる。

 新排ガス規制であえて厳しい選択

今年から実施された新たな排ガス規制は、今回初めて導入されたヨーロッパ基準の「ユーロ4」と、これまでのアメリカ基準の「04」である。同有限公司では「ユーロ4」を採用している。

 排ガス規制は、PM(黒鉛浮遊物)とNOX(窒素酸化物)の値で決められるが、いずれか減らすと、もう一方が増えるという問題があり、なかなか難しい。台湾はこれまでアメリカ基準のみだったが、今回あらヨーロッパ基準を取り入れた。アメリカ基準「04」を比べると、ヨーロッパ基準「ユーロ4」がより厳しい。例えばアメリカ基準のPM値は、ヨーロッパ基準より4倍の値でも通る。NOX値は若干アメリカ基準がきついという違いがある。しかし同有限公司では厳しいヨーロッパ基準を取り入れた。

 川浪副菫事長は「あえて厳しい方を選択しました。排ガスのクリーン度をわが社のセールスポイントにしたいと考えている」とその理由を話す。さらに、もう1つのセールスポイントとして、イージードライブを挙げた。

 乗用車では当たり前のオートマチックとは構造的に違う、いすゞが独自に開発した機械式オートマチックトランスミッションである。コンピューター制御でシフトチェンジするシステムで、機械の向上とクラッチ板が減らないなどの利点がある。

年内にトラック専用拠点17ヵ所

これまでトラックなどの大型車には、オートマチックは適さないといわれてきた。乗用車のオートマシステムは、トランスミッション内にオイルを満たしておくトルコンでつなぐシステムだが、燃費が悪いのとエンジンブレーキが利きにくいため、生産財でコスト節減が求められる商業車には向かなかった。

 いすゞ独自のこのシステムでは、その部分がクリアできるため、今年から業界で初めて小型トラックへの導入に踏み切った。「極めて専門的な説明が必要なので一般的にはそれほどPRしていませんが、今後は積極的にやりたい」と意欲的な姿勢をみせている。

 具体的には、ラジオ、新聞、雑誌でPRを展開し、「五十鈴-いすゞ」ブランドの知名度アップを図る。さらにディーラー網も拡充する、これまで太子汽車の乗用車のショールームに併設されていたが、年内にトラック専用拠点を17ヵ所に設けることが決まっている。

 川浪副菫事長は1983年いすゞに入社。国内販売部門一筋に歩いてきた。販売会社を立ち上げたり、直近の2年間は国内から中国事業にかかわったりしている。台湾に赴任したのは昨年(2006年)1月。夏には太子汽車との協力関係をまとめ上げ、今年は新たな戦略に打って出た。本領発揮の時を迎えたようだ。


台湾五十鈴汽車工業()有限公司
台北市敦化南路2段39号12階 電話;02-2325-7558
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川浪さんより会員の皆さんへ一言  

台湾生活2年3ヶ月、台湾三田会の仲間に入れて頂いてから2年弱の月日はあっという間に過ぎ、皆様とはこれからより深いお付き合いができるものと思っておりました矢先の帰任辞令。誠に残念ではございますが、先日帰国の途につきました(ついてしまいました)。

私自身、慶應義塾には、普通部から大学まで10年間お世話になった後、卒業してからも色々な形で学生時代の仲間とつながりを持ちながら25年が経ちましたが、台湾でのこの2年間が最も「慶應」を身近に、そして塾員であることのありがたみを感じることのできた期間でした。

毎月の三三会、春秋のゴルフ慶早戦、平成の会主催の淡水川クルーズ、有志での日頃の食事会・飲み会・ゴルフ、仕事上の相談・愚痴を聞いて貰う等々・・・初めての海外生活(単身!)を送る私にとって、どれほど支えになってくれたことでしょう。

これからは台湾三田会OBとして、誇りを持って日本での生活に戻りたいと思います。

幸い、日本で台湾の営業窓口をさせて貰えますので、今後は出張でお邪魔します。その際は是非今まで同様のお付き合いをよろしくお願いします。

皆様、どうもありがとうございました。